視線を感じて振り向いたら、一段下がった裏の草むらから灰色の猫がジッとこっちを見つめていた。
まるで置物のようにシャンと座り、微塵も動かずに。
別の日、夫が、庭の畑に灰色の猫が置物の様に座っていると。
見に行ったらもう居なくなっていたが、きっとあの猫だ。
あの猫には、どこか、たたずまいに品がある。
逃げの体制で顔だけこっちを見て全速力で走り去る野良猫はたくさん見てきた。
顔の輪郭が分からないほど毛がボサボサだったり、ゴミ集積所の番猫になっていたり。
彼らも生きる為に必死なのだろうが、これじゃあ人間からは嫌われる一方だ。
しばらくして、朝、車に乗っていたら灰色の猫が振り向きざまに全速力で走り去って行った。
あの猫だ。
でも、毛がボサボサで、一瞬見えた顔にも所作にも、あの品の良さは残っていなかった。
この猫は元々は飼い猫だったんだろうと思う。
なぜこうなってしまったんだろう。
野良猫や捨て犬を連れて帰り、愛情込めて飼い始める動画をいつも微笑ましく観ているけれど、しかし、実際にはなかなか出来ない。
私は薄情なのかな…
野良猫には餌を与えるな、という昔の教えが頭をよぎってしまう。
隣の家は愛猫家で、アメリカンショートヘアを20年近く飼い、老衰で亡くなるまで面倒をみていた。
しばらく猫の姿は見えなかったけれど、最近、魔女の宅急便のジジの様な真っ黒い猫をお迎えした様だ。
「飼い主ガチャ」と言ったら失礼なのかもしれないけれど、ペットの生涯は、つくづく飼い主次第だなと思う。
今頃、灰色猫は暑い中どこをうろついているのかな。。。